YouTube で「仙台空港」を検索すると、駐車場に止められていた大量の車、そして滑走路の上のヘリコプターが津波で押し流される信じられない映像が見つかる。
だが今、Google Earth のアプリケーションで仙台空港を表示してみると、滑走路の線が少し薄くなっているもののちゃんと空港として機能していることがわかる。写真からは、都市機能を取り戻そうと奮闘した人々の語られない物語があったことが伝わってくる。
この状態で画面上の「時計」のようなアイコンをクリックすると「時間スライダ」が現れる。これは時間を巻き戻して、過去の衛星写真を表示するための機能だ。
執筆時点で表示されている写真は 2012 年 3 月 4 日時点のものだが、スライダーを右から 3 分の 1 くらいのところまで巻き戻すと、2009 年 8 月 14 日、しっかりと濃い色の線が滑走路に描かれたかつての仙台空港が姿を現す。
ここで右の矢印をクリックすると、今度はあの地震の直後、2011 年 3 月 12 日の仙台空港上空にタイプスリップする。あいにくこの日の仙台は厚い雲に覆われており衛星写真からは空港の様子をまったく見ることができない。しかし、もう 1 度右矢印をクリックすると、3 月 13 日に移る。かなり薄まった雲の合間からは、滑走路の線も完全に消え、どこが駐車場だったかもわからなくなった変わり果てた空港が姿を現す。
さらにクリックして 3 月 14 日になると、空気は澄み、被災した空港のありのままの姿があらわとなる。17日、がれきが整理されたのか、描き直したのか滑走路の線が再び現れる。24日、軍用機らしき飛行機が 2 機止まっている。27日、飛行機は見当たらないが、駐車場にたくさん車が止まっており、空港で何かが起こっているのを感じさせる。4 月 6 日になると、便数が少ないのかやはり飛行機の姿はないが、空港としての活気が感じられる。
Google Earth で我々が目にする衛星写真は、通常、数年に 1 度ほどのペースでしか更新されない。さらにテクノロジーが進歩したら、もっと頻繁な更新も可能になるのかもしれないが、少なくとも現時点では主要都市でも年に 2 〜 3 回程度の更新頻度だ。
しかし、東日本大震災からの 1 〜 2 ヶ月は、驚くほどの頻度で更新された。
その後、3 月 31 日からは、衛星写真以上のディテールを確認できる鮮明な航空写真(人工衛星からではなく、飛行機から撮影した写真)の提供も始まった。
高精度、高撮影頻度の上空写真から、利用者はたくさんの情報を得ることができる。前回紹介したように「この道路を車がぜんぜん走っていないのは、道の真ん中を津波で流された船がふさいでいるからだ」といったことも現地に着く前にわかる。東北沿岸部にある知り合いの家が、津波で流されていないかも、危険をおかさずに確認できる。